損害保険研究 第73巻第1号
損害保険事業総合研究所
2011年5月発刊
<研究論文>
「保険法特集」の掲載にあたって
中央大学法科大学院教授、東京大学名誉教授、西村高等法務研究所所長 落合 誠一
保険法における人保険契約の分類
東京海上日動火災保険株式会社 個人商品業務部 吉澤 卓哉
目次
1.なぜ人保険の分類を議論するのか
2.損害填補型の人保険の分類
(1)「傷害疾病損害保険契約」と他の人損害保険契約との規律内容の相違
① 片面的強行規定の適用除外の排除
② 保険の対象者の解除請求権
③ 「傷害疾病損害保険契約」に関する読替規定
(2)「傷害疾病損害保険契約」と他の人損害保険契約との分類基準
(3)規律内容の相違の妥当性
3.定額給付型の人保険の分類
(1)「死亡保険契約」と「傷害疾病定額保険契約」との規律内容の相違
① 「保険事故」概念の有無
② 被保険者同意と解除請求権
③ 重過失免責
④ 重大事由の相違
(2)「死亡保険契約」と「傷害疾病定額保険契約」との分類基準
① 「一定の傷害や疾病」に基づく分類を設ける考え方
② 「傷害疾病」に基づく死亡に分類を設けない考え方
(3)規律内容の相違の妥当性
(4)生存保険契約と「傷害疾病定額保険契約」との分類基準
4.定額給付型(金銭給付方式)の人保険契約に関する非典型契約の取り扱い
5.結 語
保険法第36条の片面的強行規定適用除外の考え方
三井住友海上火災保険株式会社 火災新種保険部費用技術保険チーム 柴田 健
目次
1.はじめに
2.保険法第36条制定の経緯
(1)保険法第36条とは
(2)保険法第36条の立法過程
① 法制審議会保険法部会「中間試案」(平成19年8月)
② 法制審議会保険法部会(中間試案公表後)
③ 法制審議会の答申(平成20年2月)~法案成立まで
3.三井住友海上社における事業リスク用約款/個人リスク用約款の使い分けの考え方(1)保険商品ごとの事業リスク用約款/個人リスク用約款の使い分けの判断基準
(2)自動車保険
(3)火災保険
(4)新種保険
4.三井住友海上社における約款対応(片面的強行規定の適用除外を適用した約款例)
(1)全体方針
(2)告知義務
① 質問応答義務
(3)危険増加による解除(いわゆる通知義務)
① 通知時期
② 引受範囲外の危険増加の取扱い
(4)調査権拒否解除
(5)超過保険
(6)保険給付の履行期(保険金の支払時期)
5.問題点と対応策
(1)事業リスクであるが、引受対象の中に稀に個人リスクが混入する可能性がある場合の対応
(2)実務運営上の具体例
6.まとめ
改定約款における事故発生時の義務違反と損害調査実務
三井住友海上きらめき生命保険株式会社 人事総務部 奥山 智史(執筆時:三井住友海上火災保険株式会社 損害サポート業務部自動車チーム)
目次
1.はじめに
2.事故発生時の義務の法的性質
(1)学説・判例
① 学説
② 判例
(2)考察
3.義務違反規定の適用場面
4.控除の対象となる損害の範囲
(1)損害説明義務違反(虚偽申告)の場合
① 調査費用
② 事案対応を委任した弁護士への報酬
③ 遅延損害金
(2)訴訟通知義務違反の場合
① 全く通知がなされなかった場合
② 通知時期が遅延した場合
(3)事故通知の遅延の場合
5.おわりに
保険法第20条「重複保険」の保険金支払実務への影響
三井住友海上火災保険株式会社 損害サポート業務部火災傷害新種チーム 松浦 秀明
目次
1.保険法第20条「重複保険」導入の効果と影響
(1)保険金請求手続きの省力化
(2)臨時費用保険金等の支払額への影響
(3)保険会社が破綻した場合に対する影響
(4)保険会社の実務への影響
2.保険金請求手続きの省力化に伴うメリット以外の影響
(1)保険金請求権者からの付随的な保険金等の請求漏れの可能性
(2)保険金の請求順序により支払額が異なる可能性
3.保険金請求手続きの省力化に伴い発生するデメリットに対する当社の対応
(1)保険金請求漏れの可能性への対応
① 保険金請求権者から当社に保険金請求手続きがなされた場合
② 保険金請求権者から重複他社に保険金請求手続きがなされた場合
(2)保険金の請求順序により支払額が異なる可能性に対する対応
4.生命保険商品と重複した場合
5.最後に
被保険者による不実申告と保険者免責の可否
株式会社損害保険ジャパン 文書法務部 田爪 浩信
目次
1.はじめに
2.問題の所在と本稿の目的
(1)不実申告に関する保険法の規律
(2)問題の所在
(3)本稿の目的
3.保険法施行前の旧保険約款とその適用上の限界
(1)旧保険約款の規定
(2)小括
(3)裁判例
(4)損害保険契約法改正試案
4.保険法施行後の新保険約款と近時の議論
(1)立法過程における議論
①法制審議会保険法部会-中間試案以前-
②中間試案以降
(2)保険法成立後のコメント
①法務省立案担当官のコメント
②金融庁パブリックコメント
(3)保険法のもとでの新保険約款の制定
(4)不実申告免責の可否をめぐる近時の議論の素描
5.私見-望まれる方向性-
(1)不実申告の意義の明確化
(2)私見
6.むすびに代えて
統一料率と保険会社のインセンティブ - 自賠責保険と地震保険が経営に与えた影響 -
一橋大学教授 米山 高生/京都産業大学准教授 諏澤 吉彦
目次
1.はじめに
(1)問題意識の背景-事実上の統一料率制度の維持-
(2)本論文の課題
(3)先行研究
2.データと記述分析
(1)データ
(2)モデル
(3)被説明変数と主要な説明変数の時系列的な傾向
3.計量分析の結果
(1)規制緩和以前(1985年から1996年)の結果
(2)規制緩和以後(1997年から2008年)の結果
(3)結果の吟味
①規制緩和前(1985年-1996年)の結果の解釈
②規制緩和以降(1997年-2008年)の変化
4.結論 自賠責保険と地震保険に関する保険会社のインセンティブ
<研究ノート>
保険市場における情報の非対称性 - 実証研究のサーベイ -
帝塚山大学准教授 斉藤 都美
目次
1. はじめに:理論研究の進展と実証研究の遅れ
2. Chiappori and Salanié (2000)
2.1 「情報の非対称性のテスト」
2.2 テストの結果
2.3 分析上の注意点
2.4 なぜ保険か?
3. その後の展開
3.1 “Positive correlation”テストの応用
3.2 “Positive correlation”テストの改良,サンプル・セレクションの問題
3.3 逆選択とモラルハザードの分離
3.4 構造推定
3.5 “Sufficient Statistics”
4. 結論
<判例研究会>
他車運転危険担保特約の免責条項にいう「正当な権利を有する者の承諾」の解釈
首都大学東京教授 潘 阿憲
賠償責任保険契約における生産物特約条項の適用
愛知学院大学教授 山野 嘉朗
<損保総研事業活動の報告>
損保総研レポート第94号(2011年1月発行) サマリー
公益財団法人 損害保険事業総合研究所 研究部
目次
「損害保険会社の収益性向上について-欧米の事例からヒントを探る-」 主席研究員 佐藤 大介
「米国・保険仲介者の報酬開示規則-論争続くコンティンジェント・コミッション問題-」 主任研究員 武田 朗子
サイズ:A5判