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詳細
国際保険資本規制の動向 ―銀行のバーゼルⅢとの比較を踏まえて―
主席研究員 金田 幸二
金融危機を契機にして、G20首脳会合の下、国際的な金融規制改革が推進され、銀行の自己資本規制基準の包括的改定であるバーゼルⅢや、世界的に金融システムに影響を及ぼすグローバルな金融システム上重要な金融機関(G-SIFIs)に対する包括的な政策措置などがまとめられています。
この流れを受けて、保険監督者国際機構(IAIS)は、グローバルな金融システム上重要な保険会社(G-SIIs)を認定する評価基準とともに、これまでの原則的な保険規制・監督基準とは異なる、G-SIIsに適用する具体的で定量的な保険資本基準である基礎的資本要件(BCR)を2014年10月にまとめました。さらにIAISは、国際的に活動する保険グループ(IAIGs)に対する資本基準である保険資本基準(ICS)の基本案をまとめ、2014年12月から市中協議を開始しました。
本稿では、保険規制にも影響を与えている銀行のバーゼルⅢ等の概要を紹介した上で、これらとの比較を踏まえてIAISのG-SIIsの評価基準および高い損失吸収力(HLA=自己資本の上乗せ)などの政策措置、基礎的資本要件(BCR)および保険資本基準(ICS)の特徴を説明しています。銀行グループと保険グループでは、リスクの性質は異なり、資本規制におけるリスク量等の捉え方は異なりますが、リスクを吸収するための自己資本の機能については類似する面が多いことから、自己資本の取扱に関する比較を中心に説明しています。国際的金融規制改革の議論は、銀行から保険およびその他の金融機関に拡張される動きが見られることから、先行する銀行規制の動きを含めて今後の動向を注視する必要があると考えます。
《目次》
1.はじめに
2.金融規制改革の流れ
3.バーゼル銀行監督委員会(BCBS)による国際資本規制(バーゼルⅢ等)
4.保険監督者国際機構(IAIS)による国際保険資本規制
5.おわりに
米国のサイバー・インシュアランスの動向
主席研究員 山下 潤
ハッキング等のサイバー犯罪が世界経済に与える被害額は年間5,800億ドルとも報じられており、とりわけ米国は世界で最も被害額が大きい国です。サイバー犯罪等に起因する顧客情報の漏えいも大きな問題であり、当該企業にとっては、信用(ブランド)の失墜だけでなく、事故対応のために巨額の費用が必要となります。2013年末にハッキングによって顧客情報の漏えいが発覚した米国の大手ディスカウントストアは、既に1億5,000万ドルを超える対策費を計上しています。また、CEOの辞任にとどまらず、株主から役員に対する代表訴訟も提起されています。同社は、これまでに要した顧客情報漏えいの対応に関する費用のうち、既に9,000万ドルは保険で補償されると公表しており、これに加え6,500万ドルのD&O保険も付保していると報道されています。
近年、米国では有名企業による相次ぐ顧客情報漏えい事故等を契機に、サイバー・インシュアランス市場が拡大しています。一方、同保険は比較的新しい分野のリスクをカバーする保険であることから、適正な保険料率の算出やリスクの集積・巨大化等の問題も内包していると考えられます。
わが国においても、2015年1月にサイバーセキュリティ基本法が全面施行されるなど、サイバー・リスクに関する懸念や対応の必要性は高まってきています。日本企業もグローバル化が進展しており、わが国の保険業界としても、同分野の保険商品の提供や関連サービスを一層充実したものにする必要があります。
本稿では、米国企業におけるサイバー・リスクの位置付けやサイバー・インシュアランスの市場および商品等の動向について取り上げています。サイバー・リスクや同保険に関して米国の保険業界が抱えている課題等については、わが国にも共通するものがあると考えられることから、先進的な米国の動向は参考になるものと思われます。
《目次》
1.はじめに
2.サイバー・リスクの概要
3.サイバー・インシュアランスについて
4.サイバー・インシュアランスの商品内容と関連サービス
5.米国以外の動向(情報漏えい事故、データ保護法、保険等)
6.サイバー・インシュアランスの今後の展望・課題
7.おわりに
- 追加情報
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追加情報
発刊日 2015/01/31 編著者 (税込・送料無料)
(公財)損害保険事業総合研究所
研究部サイズ A4 ページ数 70